人々の生活スタイルは夜型化し睡眠時間は確実に減少している.
短い睡眠時間でも日常生活に問題なければよいが,実際には睡眠不足によりもたらされる影響は,肥満,高血圧,糖尿病,心血管疾患,精神疾患等多岐にわたり,無視できるものではない.
睡眠は「疲れたから眠る」というものではなく,もっと積極的かつ能動的であり,「明日によりよく活動するため」に脳神経回路の再構築(記憶向上),メンテナンス(脳内老廃物の除去)を果たしている.
睡眠不足や質の悪い睡眠は認知症の促進因子となり,逆に,質の良い睡眠は抑制因子となる.
最近の研究で,認知症発症に対して睡眠時無呼吸が影響を及ぼしていることがいくつかの大規模研究によって示されている.
今後,睡眠の観点からも認知症予防に取り組むことが必要であり,特に30代から50代までの若い世代の睡眠不足や睡眠障害,睡眠時無呼吸に対する早期診断、また若年者からの睡眠教育が第1次予防として重要であると考える。
調査によると、実に39. 2%の方の睡眠時間が6時間未満であった。睡眠時間が6時間未満の群 では,6時間以上の群に比べて,入眠困難,中途覚醒, 早朝覚醒を多く訴えていた。これは,睡眠時間が短くなると睡眠の質が悪くなり,さらに眠れなくなって睡眠時間が短縮するという悪循環が形成されることを意味する。
高度経済成長期には,睡眠時間をできるだけ切り詰めて働けば,生産性が上がり,経済的に裕福になるとの考えから,昼も夜も睡眠を削って活動してきた.その結果 として健康を害し,心のゆがみやうつ病を生じることになった.
交代勤務の経験年数と病気との関係を調べた研究から,交代勤務を長く続けていると,その年数に比例して,うつ病や心血管病リスクが増加することが知られている.睡眠時間が平均6時間を下回る人は,7~9時間の人に比 べて,死亡リスクが13%高くなると述べられている.
睡眠に関して何らかのトラブルを抱えている人の多くが,さまざまな生活習慣病に罹患していることが明らかになっている.
これまで肥満は食べすぎや運動不足が原因だといわれてきたが,その背景には睡眠不足も大きく関与している。
健康な成人を対象とした研究で,睡眠時間を4時間に制限すると,食欲を調節するホルモンのアンバランスが生じ過食になり,肥満になると言われている.
また交代制勤務者では,日勤者に比べて,乳がん,前立腺がん,大腸がんが多いことが報告されている.人はメラトニンというホルモンの作用で昼夜を区別している.
「メラトニン」は,体内時計の働きによって朝の光を浴びてから14~16時間後に血中濃度が増大し始め,眠りの準備をもたらす.
メラトニンは「明暗に依存」して 分泌されるため,眠る前に明るい照明環境にいると,その分泌が抑制され,寝つきを悪くする.
このメラトニンには,ヒトでは睡眠作用のほかに,性的成熟抑制作用, 活性酸素の中和作用,抗加齢,抗がん作用等多様な生理作用を持ち,身体を夜の間に修復している.
そのため交代制勤務者にがんの発症が多いのは,夜間の光を受光することにより,メラトニン分泌が抑制されることが関与していると推測されている.
私たちの心身の健康を支え,労働災害を低減する最も重要なテーマは睡眠である.適切な睡眠をとることができれば,疾病になるリスクは大きく低下し,身体の老化スピードを遅らせ,認知症予防に繋がると考えられる.
脳は,エネルギーを大量に消費し,非常に繊細で脆弱な臓器であるため,機能低下しやすく“連続運転”に弱い.
朝起きてから16時間以上連続して覚醒していると,脳機能は低下し,酒気帯び運転状態と同じ程度にしか機能しなくなる.
全身の司令塔である脳機能が低下すると,正常な精神活動や身体動作ができなくなる.睡眠には疲労した脳を休息させるだけでなく,翌日に備えて修復・回復させるための機能がある.
睡眠中には,ホルモンが分泌され体内環境が整備されている.脳は睡眠をとることでしか修復・回復できないのである.
アルツハイマ ー型認知症の発症を遅らせるためには,発症以前の健康な時期から危険因子を減らす生活習慣を身につけ,アミロイドβの蓄積の速さを遅らせることが有効であると 考えられる.
高血圧や糖尿病などの生活習慣病がリスクを高める半面,バランスのとれた食事や適度な運動,知的活動などは予防効果があることが分かっている.さらに睡眠不足や睡眠障害も認知症リスクを高めることが報告されている.
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